2008年11月28日

不況に打ち克つ作家たち

先日、新橋東京美術倶楽部にて開催された東京アートフェアを観に行きました。
世界的不況で市場が縮小するご時世、先の見えない閉塞感が漂っていたように感じました。買い手の品定めが厳しくなるなか、作家にはこれまで以上に質の高い仕事が求められます。
そういう意味で若手が全般に精彩を欠いていたのが気になりました。とはいえ少ないながら精彩を放つ俊英たちにも出会いました。3名紹介したいと思います。


日本画家の漆原夏樹さんはパンダや鹿といった動物たちを一見ほのぼのとした黄基調の色づかいで写実的に描いています。寄って見ると体毛の描き込みが入念で、線はシャープで美しく、目には獣性と野生のしたたかさが爛々と輝いています。かわいいけど愛玩動物じゃないよ、弄べば凶暴なしっぺ返しが待っているよ、と、そんなイメージと現実とのギャップを漆原さんは確かな技術で描ききっていました。

同じく日本画家の龍口経太さんは、「ゴスロリ・メイド」とでも形容できそうな女の子を描いています。モノクロームに近い調子でまとめられた画面は明快でシック、髪や衣服も手が込んでいてよく線が走っています。頭巾をかぶった三頭身くらいの少女を描いた連作も面白かったのですが、個人的に驚いたのはフィギュアを出品していたことでした。これが非常に出来が良く、原型師の手を借りながらも確かに龍口さんの作品になっていました。聞けば制作期間半年以上、作家は原画だけでなくディティールの修正にも積極的にかかわったそうです。

野口哲哉さんは侍フィギュア・武者絵・猫用甲冑を出品していました。侍たちはみな甲冑に身をかため滑稽なポーズをとっています。実際に着用可能、威圧的かつ間抜けな猫専用甲冑、カタパルトから射出される侍フィギュア、ドラえもんの「タケコプター」を頭に群れをなして飛ぶ侍たちや大豪族の愛猫と彼女に仕える四人の家臣たちの武者絵。悪ふざけと思われるかもしれませんが、完成度の高さは圧倒的で隅々までよく作り込まれた贅沢な逸品ぞろいです。野口さんご自身、大の甲冑マニア。関ヶ原の戦い当時の甲冑についての講釈は博物館学芸員と見紛うばかりに博識で流暢でした。


彼らに共通するのは、高い技術、あらゆる細部にまで行き届いたこだわり、なかば狂気じみた対象への愛、作品の質に対する責任感の強さです。常に技術を磨き、ポリシーに忠実でありつづけ、作るものにはとことん責任を持つ、そんな当たり前のことを当たり前にできる作家が不況に負けず生き延びていくのだと確信しました。厳しい時代だからこそ今後美術はますます面白くなると思います。
(S)

posted by ART BOX at 14:02| 東京 雨| Comment(0) | TrackBack(0) | ■スタッフの日誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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