今年前半に彼がスイス・ローザンヌ市に寄付した作品を基に設立された美術館と滋賀県近江八幡市にある専門美術館の協力で実現した、正規の美術教育を受けていないスイスやフランス、インド、日本などの知的障害者を含めた21人の絵画や陶芸を集めた展覧会「アール・ブリュット/交差する魂」が北海道、滋賀、東京を巡回したので、ご覧になられた方もいたのではないでしょうか。
日本でも近年、作業所のアトリエ活動などを通じて知的障害者らの作品評価が始まり、絵画や立体作品のほか、絵をプリントしたTシャツなどの商品を売り、障害者の収入につなげる動きも出てきています。
作業所の窯で焼かれた、全身を1万本もの小さなトゲでびっしりと覆われている陶芸の不思議な生き物の作品、都市の全景を、気が遠くなるほど精緻に細密に描いた絵画や木片を組み合わせて数々のエッフェル塔を作った全盲の作家の作品などアウトサイダーアートの作品は、その無垢な独創性や研ぎ澄まされた感性から、ヨーロッパでは、模倣とは無縁の「真の芸術」として注目されています。
既成の美意識、流行や社会的評価に惑わされることなく、作り手本人のやむにやまれぬ何かの思いにのみ司られ作られた作品は、人が人として存在する上で根源的に持っている「表現したい衝動」というものの底流をありありと伝えてきます。
とかく情報や流行に振り回されがちな自分にとっても、観る者の心に強く語りかけてくる表現の始源性に満ちたアウトサイダーアート作品との出合いは、感性を揺さぶられ、これまでの既成概念に縛られた芸術観や美術観を一変させるパワーに満ちたもので、本当に衝撃を受け、感動しました。絵画や芸術に興味のある諸兄諸姉は、迷いのない突き抜けた力強い表現が観る者の芯を揺さぶり癒してくれる、不思議なオーラに包まれた魂の芸術家たちの作り出すアウトサイダーアートの作品世界をぜひ一度鑑賞体験してみてください。きっと、私同様その深遠な、魅力的な瑞々しい作品世界の虜になること請け合いですよ。
(KY)
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